ニューヨークとは、アメリカとは、そして日本とは。 マーケティングに関する話や人々の日常生活の中で思ったこと、考えたこと、驚いたことなどを書き留めていきます。
April 30, 2007
ちょっとだけ見たいモノ
遠くでの戦争で多くの一般市民や、仕掛けた側の米軍も犠牲になっている一方、株価が連日上昇している米国市場に少し違和感を感じてしまいます。さらに、ニューヨークではここ数年、住居・オフィスビルともに建設ラッシュと言えるぐらい、街角での建設工事が目に付きます。これも好景気の象徴なのでしょうか?
当然、騒音問題や交通規制などの面倒なことが増えて、その都度住民は不便さや不快さを我慢することになります。そんな中、僕がこちらに引っ越した十数年前から変らない、ちょっとした「街のナイスな仕掛け」があります。それがこの写真です。わかりにくいと思いますが、これは工事現場(特にオフィスビルなどの大きな建築現場)の囲いの塀です。歩行者に瓦礫やほこりが届かないようにと、ぐるっと塀で囲うのは日本もニューヨークも同じでしょう。
ちょっと違うのが真ん中に空けられている小窓です。見事に人間の好奇心をくすぐるこの小窓。忙しいニューヨーカーも時折立ち止まって、中の工事の様子をちらっと見るシーンをよく見かけます。中を見たからといって、万華鏡のような特別な世界が展開されるわけでもなく、単に地面を掘り起こし、鉄筋を組み立てている通常の工事現場なのです。さらに、人間の目線の小窓とともに、犬の目線の小窓をあけているとても「ナイス」な現場も過去何回もみています。
商品やサービス。機能や利便性だけ追求しがちな最近の世の中だけに、このようにちょっと視点を変え、普通の人が普通に「ホッ」とする小さな仕掛けを見つけることは大切なのかもしれません。
April 26, 2007
ラップ車
10年以上も前のことです。ニューヨークに突如出現したラップバス(広告グラフィックで包まれたバス)を見てびっくりさせられました。その後このラップバスは世界中に普及し、日本でも長野オリンピックを皮切りに、今では公共のバスにも利用されているという話を聞いてます。
先日街を歩いていて遭遇したのが写真の「ラップ車」です。ベースとなる車がホンダのElementで、これは僕が乗っている車でもありその利便性に満足しているのですが、乗用車が「ラップ」されているのははじめて見ました。バス以外にここまでしっかりとラップしてある一般車を見て10年前とは異なった驚きと趣きがありました。
肝心のラップの内容が、ニューヨークの郊外に店を構える小さなクリーニング屋の広告であったことがその理由です。今までの概念では、このラップものはバスなどの公共交通機関を広告媒体とする大企業向け広告ベニューの一つとして考えられてました。したがって広告主も大手企業が中心です。ところが、乗用車やバンなどを上手にラップすることで、この写真のように商用車がそのまま広告ビークルとして活用できるわけです。
フィルムに特殊印刷を施し車を包むこの手法。技術が進んでかなり安価に実施できることになったのでしょう。そうなったことで、大企業だけが相手であったこのニッチな分野も中小、個人商店の範囲まで降りてきたように思えます。こんな所にも「ロングテール化」が垣間見える時代になっています。
April 23, 2007
ROIそれともブランディング?
肌寒かった西海岸から1週間ぶりにニューヨークに帰ってきました。昨夜空港から家に急いで帰ってレッドソックス戦を見たのですが、結果はあえなく3連敗。故障者続出のヤンキースには厳しい開幕ですが、弱いヤンキースは見たくないので早く復活して欲しいものです。
さて、ニューヨークの月曜。寒かった西海岸とは正反対に気温は30度に届きそうな勢いです。春を飛び越え夏に近づいた喜びからか、太陽を一杯あびながらユニオンスクエアの階段でランチを食べました。そこに、セグウェイに乗ったキャンペーン軍団が近づいてきました。全米屈指の商業銀行でニューヨークが拠点のChaseです。(正確には商業銀行だけでなく複合的な機能の銀行ですが難しいことは省きます)仕事柄興味が沸いたので、写真の運転者に質問してみました。
キャンペーンの目的は「新規口座開設」で、開設してくれた人にはもれなくTシャツプレゼントというオファー付きです。「Tシャツはいらないからセグウェイをください」との質問の答えはもちろん「だめ」。「じゃぁ今日は天気がいいから、運転だけさせて欲しいな」と聞くとこれももちろん「だめ」。そりゃそうですよね。でも、運転手とのジョークを中心としたやり取りはとても愉快なもので、ランチを食べながら暖かな陽気の下の暇つぶしにはとても楽しい出来事でした。
このキャンペーン。Chaseは何を期待しているのでしょうか?「新規口座数○○件獲得目標!」であれば少々的はずれだと思います。想像してみてください。晴天の公園にて銀行口座を開設する人が何人いるのでしょうか?しかも、たったTシャツ1枚というオファーでです。Chaseという銀行はニューヨーカーならほぼすべての人が知っている銀行なので、認知のためのゲリラマーケティングでもありません。ですので、セグウェイを利用した今回の目標は「リターン」でも「認知」なく、あくまでも「柔らかい銀行」というメッセージのブランディングに主眼を置いたゆるやかなものなのでしょう。
April 17, 2007
マイナーリーグ ベースボール
雨で大荒れのニューヨークから、またまた西海岸のシリコンバレーに来ています。仕事の合間を見つけて、今日は写真の球場で San Jose Giants対Modesto Nutsの試合を見ました。両方とも聞いたことがないチームなのは当然で、日本流に言えばプロの3軍あたりの組織に位置するチームなのです。
西海岸への出張が決まると同時にSJ Giantsの予定を調べ、今日の日を楽しみにしていました。3軍の試合がそんなに楽しみだった理由は、その球団で日本人の友人が働いているからです。仕事仲間のMさんを通じて知り合いになった、20代の若者S 君の球団職員としての働きぶりを一目見たいと思っていたのです。
球場に着き、Walkie Talkie(トランシーバー)を片手に現地のスタッフと一緒に試合前の球場を走り回って、立派に活躍しているS君の姿を見てとても嬉しく思いました。契約金含め総額百何十億円プラス ベビーシッター費用や通訳費用など生活上の経費まで球団が支払うという、日本人大リーガーが出現している一方、地方都市のマイナーリーグの球団職員として毎日泥まみれ・汗まみれになって働く日本人。共にアメリカの野球を舞台とした職業人のストーリーですが、庶民の僕にとっては後者のS君の活躍の方ががより眩しく美しく思います。
そして、写真の星条旗が半旗になっているのがわかりますか?バージニア州で悲しい事件があった翌日、現場から4000km以上も離れているマイナーリーグの試合開始時にも黙祷を全員が捧げることにしていました。ニューヨークに住みヤンキースを応援し続けている僕も、バージニア州の事件と共に、先日急逝した野球を愛し続けたスポーツ新聞デスクの宮川達也君への想いもそっと捧げました。
April 12, 2007
グラフィティ
ニューヨーク名物の一つでもあるグラフィティ。果たしてこれはアートなのでしょうか?歴史をさかのぼれば、古代ギリシャ時代の壁画もグラフィティの一つとして考えられ、それは、アートでもあり歴史を語る立派な証拠としても貴重な存在です。さらに、粋なグラフィティを廃墟などで見かけると、なるほどこれもアートなんだ。と思わせられることもあるのは事実です。さらに、「ニューヨークらしさ」を演出する大事な要素でもあることには同意です。
でも、やっぱりこれはいけないことでしょう。自分の家や車に対するグラフィティであれば思いきり派手に表現すればよいですが、他人のプロパティや公共のモノに対しては犯罪と考えられるのは当然です。近代グラフィティ発祥の地であるニューヨーク市でも、Anti-Graffiti Initiativesの名の下条例を整え、立派な犯罪として罰金の対象としてます。自分の住んでいるアパートの壁に落書きをされていたら、たとえそれが「アート」らしくても毎日見るたびに不機嫌になるでしょう。
ニューヨーク発のこの悪い行為が世界中に拡散しているようです。日本でも問題になっているという話を聞きました。パリ、バルセロナ、ベルリンなどの美しい欧州の都市でも、必ずやこのグラフィティを見かけてがっかりします。ニューヨークという200歳そこそこの青年都市の悪い行為が、その数倍の歴史を持つ日本や欧州の美しい都市を汚している事実に対して、時に腹が立つこともあります。
April 09, 2007
American Idol - その3
気温が上がらずダウンが離せないような珍しい4月を迎えているニューヨークです。お休みしていたBlogも元気に復活し、今回のテーマは人気番組 American Idol(AI)をまたまた取り上げてみます。
決勝ラウンドに進んだこの番組、先週まででベスト8まで絞り込まれております。このBlogでは、予選の面白さ、Melindaというシンガーの存在と2つのテーマを取り上げてきました。今回は、テレビ番組としてのAIを考えてみます。毎回15%以上という相変わらずの高視聴率を維持していますが、この影には「歌唱力コンペティション」と「大衆娯楽番組」との2つの異質な番組特性を巧みに編集/コントロールしている努力があると思います。
「歌唱力コンペティション」としては、現在のトップ3 女性シンガーのようにすぐにでもプロに転向できる実力を持った出演者を抱え、次なるパフォーマンスを期待させる仕組み。これはこれで素晴らしいのですが、この特性だけに着目していると番組が「固く」なるだけでプライムタイムで高視聴率を維持するのは厳しいのでしょう。そこでFoxは「大衆娯楽番組」の要素を決勝ラウンドから見事に取り込んでいます。「一般聴衆による投票」という地味な仕掛けが、娯楽番組性を引き出す「てこ」の役となっていることに気づきました。視聴者からの課金投票にて広告収入以外の収益を番組として確立したと思われがちなこの仕組み。実は、AIの高視聴率を維持するための影の立役者であり、新収益源以上の意味があるはずです。
歌唱力は最悪ですが、そのユニークなルックスと髪型で今でもベスト8に残っているSanjaya君。
最悪な人に投票しよう!というWebサイトでも取り上げられているように、今では10代を中心として、この17歳のインド系の少年Sanjaya君に投票することが一つのブームとなってます。ここまで来ると、優勝者はMelindaのような素晴らしい歌唱力を持ったシンガーではなく、組織票を獲得できた人となる可能性もでてきて、より娯楽性が高まるわけです。一般聴衆による投票制度が「一人の個人が複数回投票できてしまう仕組みなのでアンフェアだ」と、当初僕も思ってました。しかし、番組が真剣なコンペティションではなく娯楽番組として考えれば、複数票、組織票なんでもよいわけで予想とは全く異なる結果の可能性もあるといったスリル感も芽生えます。もし番組制作者が初めからこの2種の要素をミックスさせて狙っていたとしたら、それはかなり優秀な集団といえるのではないでしょうか?
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