December 26, 2006

米国年末商戦


クリスマスも終了し 2006年もあと数日を残すだけとなりました。小売業の年間売上高の約4割が年末の1ヶ月程度に集約される言われる米国年末商戦も最後のカウントダウンを行っています。今年はオンライン販売は伸びたようですが、店舗小売は予想を下回ったようだ。との見方が今日発表されてました。

そんな中、写真のMacy's。今年は今まで以上に大胆なDM戦略かつ小売戦略を行ったと思います。その結果はまだ不明ですが、とにかく大胆でした。DMに関しては11月後半からほぼ毎日のようにカタログ、フライヤー、カードが届き、15%オフ、1 Day Saleなどと激しく攻めてきます。一方小売に関しては、ニューヨーク界隈の店舗においては、クリスマス前は朝7時から24時開店、直前では24時間営業とやる気まんまん。こうなると、採算度外視という言葉を超えて、「どうだ。気合をみたか!」といった感じで天晴れでした。

ダイレクトメールに関しては、推定ではありますが1年間で10億通以上は確実に送付しているはずです。(下着のVictoria's Secretのカタログ送付数でさえ4億通ですから)もっぱら、自然保護に関して世界的なモラルと逆行している米国ですが、最近ではこの無駄なDMによる自然破壊を取り上げ、自粛し始めた企業もようやくでてきました。そんな中、Macy'sはそんなコトはおかまいなし。ひたすら印刷物を送り続けてきます。

この企業、僕の感覚では食料品売場のない「イトーヨーカドー」と「一般百貨店」の中間だと思ってます。全米の大都市やモールに店舗が展開されてます。ニューヨーカーにとっては、夏の花火、感謝祭のパレードなどの重要イベントの冠スポンサーとして、ブランドは浸透してます。一旦は倒産し会社更生法を適用して再生したこの企業、果たして今年の「本気の」年末商戦の結果はどう転ぶのでしょうか?

今年の掲載は今日で一休みとさせていただき、来年は1月中旬から再開する予定でおります。それでは皆様よいお年をお迎えください。ムラマツ

December 21, 2006

オートバイとブランド・ロイヤルティ


先日ささやかなパーティーに参加した際、隣にいたアメリカ人女性と盛り上がった話がありました。題材は「オートバイ」。ヤマハ発動機の本社がある磐田市出身の僕としては、頑として日本製のオートバイ。特にヤマハの良さを主張しました。(日本に住んでいた頃にはTX650というバーチカルツィンの旧車を大事に乗ってました)彼女は徹底的にハーレーの良さを主張してます。

これは面白いな?と思って、ハーレーのどこが好きかと聞くと、「音、力強さ、自由」などなど、マーケティングの授業での模範解答のようなブランド因子を答えてくれました。では、ヤマハ、ホンダのどこが嫌いかと聞くと、「音が悪い、軽そう」など僕には納得できない点をいくつか指摘してくれました。結局、彼女は競合などどうでもよくて、とにかく「ハーレーが好き」なのです。そういえば、マーケティング関係のセミナーに出た時、スピーカーの一人が最もブランドロイヤリティの高い米国ブランドの一つがハーレーである。と具体例を挙げて説明してました。この女性のコメントからも納得できますね。ちなみに、ハーレー社の株価はいたって好調のようです。

さて、写真は通りがけにたまたま見つけた Moto Guzziです。緑と黒のカラーリングがちょっと珍しく、しばし立ち止まって眺めてました。幸いなことにニューヨークでは欧州の旧車を見かける機会が時折あります。Triumph, BSA, BMW, Ducati, Moto Guzziなど、いい感じにメンテナンスされた旧車が街角に駐車してあると、うっとり見とれてしまいます。オーナーはどんな人だろうと考えるだけでもわくわくします。これがハーレーですと、「ひげづら、刺青、でぶ」のオーナー像しか想像できない私はやっぱり偏見があるのでしょう。

P.S) 12月4日にポストしたWorld AIDS Dayのイベントに出展したオートバイの絵ですが、残念ながら作家の私宛に戻ってきました。つまり買い手がなかったということです。自分では「行けるか?」と思ってたのですが、さすがに競争の激しいニューヨーク。一夜漬けのにわかアーチストはあっさり見破られるわけですね。これに懲りずにまた挑戦します。

December 19, 2006

とても忙しい時期


クリスマス直前の1週間はニューヨークで(すなわち世界で)最も忙しい時期だと思います。仕事も押せ押せ、パーティーは連夜、ギフトショッピングもまだ半分残っていて等々、ただでさえ早足のニューヨーカーの歩く速度が倍になります。同時に街には観光客も増え、ショーウィンドウに立ち止まったりして歩行妨害。忙しいニューヨーカーとハッピー観光客との冷たいバトルが、心の中にはきっとあるはずです。

写真は今日の昼休み、グランドセントラル駅とつながっているオフィスビルのスペースで開かれた地元の高校生のコーラスイベントです。音楽の専門家ではないのですが、なかなかメリハリのある「ハレルヤ」を合唱していてとても好感が持てました。こうして、地元の子供達がその練習の成果を披露できる機会が気軽にあるコトはとてもよいことだと思います。

コーラスやイベントの良さとは別にそこで感じたことは。あまりにも忙しい人々のことです。ランチタイムということもありますが、①おっ、これは何だ。と一目見る。②面白そうだなと立ち止まる。③最長でも20秒聞いたら「こんなものか」と立ち去る。といった行動パターンが殆どでした。たまたま曲の終わりにこのサイクルがはまってしまった人は、歩きながら拍手をして立ち去ります。椅子が50脚程準備されてましたが、座って聞いてる人は5分の1程度で、そのほとんどが観光客のようでした。師走って言葉が日本でもありますが、師だけでなく「市」そのものが走り続ける場所なのでしょう。

December 12, 2006

WAL*MARTと広告業界


米国広告業界では、先週かなり大きなニュースが吹き荒れました。その中心となったのが、写真のWAL*MARTです。内容を簡単にまとめると、「WAL*MART社の1年間の広告全般の委託先として一旦決められた広告代理店が白紙に戻された」わけです。

このよくありそうな話が何故そんなに大きく広く伝えれらたのかと言えば、やはりその規模にあると思います。一代理店に託す予算がなんと「650億円強」だからです。米ドルで5億8千万ドル、117円換算でも約680億円の予算額はさすがに魅力的で、大手代理店数社による競合コンペの結果、Inter Public GroupのDraftFCB社がそのコンペの勝者でした。

DraftFCB社に決定した時には「おや?」と不思議に思いつつも、トラディショナルな代理店ではなく、ダイレクトマーケティングに強いDraft社とトラディショナルなFCB社が合併した新しい組織がきっと魅力的だったのだろうと感じました。しかしこの決定の背景にはちょっとしたスキャンダルがあったのです。

WAL*MARTで代理店選択の決定権を持っていた Julie Roehm氏が更迭されたことで、DraftFCB社採用は白紙撤回されたわけです。では何故Roehm氏が更迭されたかと言うと、WAL*MART社の「ベンダー、サプライヤーからのいかなる接待やギフトに応じてはいけない」という会社規約に背いたようです。その接待とはニューヨークでも高級日本食レストランとして位置づけられる「Nobu」でのバーティーに参加したことのようです。他にも、DraftFCB社の社長が所有するAston Martinに同乗した、部下との不倫等々スキャンダラスな話がこの更迭劇のその他の理由のようです。コトの真意は全くの不明なのですが、はたして「代理店からの食事の誘いを一切受けてはいけない」という規約がいいのか悪いのか、僕には判断できないのがホンネです。

December 07, 2006

さよなら!タワーレコード


ブログを始めた頃、iPodに関して経済的に与える影響の大きさを取り上げてみました。音楽産業、家電業界、エンターテイメント業界などへ与え続けている経済効果の大きさはかなりのものです。ところが、その躍進の影にかくれ、ひっそりと衰退していくものもあります。

サンドイッチマンという日本語があります。ここニューヨークでも、5番街などの目抜き通りでは時折見かけ、宣伝というよりも、しっかりと通行人の邪魔をしてくれます。マクドナルド、洋服屋などの看板が多い中、つい最近TowerRecordのサンドイッチマンを見かけ、閉店することを知ってしまいました。

TowerRecordは会社更生法を適用した結果、米国の全店舗をクローズし、オンライン専業ストアとして再生していくという結論に至ったようです。ニューヨークでは、Broadwayと東4丁目というリベラルかつ賑やかな場所に店舗を展開し、楽曲、ビデオ、書籍など多彩な品揃えがあるため、近くの大学院に通っていた時代から何度も立ち聴き、立ち読みに立ち寄ったことが懐かしい場所です。黄色地で赤字の鮮明な看板、最新の楽曲で賑やかな店内に何度も吸い込まれ、勉強で固まった頭をほぐしてくれたのです。

オンライン商店や大規模小売店が発達してくれたことは消費者としては大変便利でありがたい。しかしながら、駄菓子屋、文房具屋、自転車屋、時計屋などのお店がすでに殆ど見かけられなくなっているのも寂しいものです。このカテゴリーについに大手レコード店が加わる時代になったのか。とiPodを聴きながらふと寂しく思った夕方でした。

December 04, 2006

World AIDS Day


World AIDS Dayの12月1日は、ここニューヨークでも様々なイベントが繰り広げられました。AIDSという病気、そしてその発症率が高いといわれる同性愛者に対して、政治も経済もアートも正面から向き合うニューヨークにとっては大切な一日だと思います。

そして今年、僕もこのイベントに初参加しました。Visual AIDSという団体が主催しているイベント「Postcards From the Edge」に写真の絵画を出展したのです。アートとは直接関係のない仕事をし、子供の時以来真剣に絵も描いたこともない僕の絵が、チェルシーの有名ギャラリーに約1500点の作品の一つとして展示されたことは単純に嬉しいことです。

このイベントはチャリティーを目的としていて、その仕組みが面白いです。参加は自由。参加者はポストカードサイズの作品(絵画、写真、オブジェ等々)を締切までに事務局に送ります。そしてWorld AIDS Dayの期間中ギャラリーにて一般公開され、来場者は気に入った作品を購入することができます。購入金額は一律75ドルです。購入時には作家の名前がわからないので、たまたま購入した作品が超大物アーチストのものである可能性もあるわけです。(購入後に購入者にその作家の名前と連絡先が伝えられ、作家には購入者の情報が伝えられます)

生まれてはじめて有名ギャラリーに自分の作品が展示された僕にとって、誰かに購入して欲しい気持ちもあれば、せっかく描いた絵なので誰にも購入されずに戻ってきて欲しいという思いもある。結果が出るまでわくわくするイベントでした。