April 09, 2007

American Idol - その3


気温が上がらずダウンが離せないような珍しい4月を迎えているニューヨークです。お休みしていたBlogも元気に復活し、今回のテーマは人気番組 American Idol(AI)をまたまた取り上げてみます。

決勝ラウンドに進んだこの番組、先週まででベスト8まで絞り込まれております。このBlogでは、予選の面白さ、Melindaというシンガーの存在と2つのテーマを取り上げてきました。今回は、テレビ番組としてのAIを考えてみます。毎回15%以上という相変わらずの高視聴率を維持していますが、この影には「歌唱力コンペティション」と「大衆娯楽番組」との2つの異質な番組特性を巧みに編集/コントロールしている努力があると思います。

「歌唱力コンペティション」としては、現在のトップ3 女性シンガーのようにすぐにでもプロに転向できる実力を持った出演者を抱え、次なるパフォーマンスを期待させる仕組み。これはこれで素晴らしいのですが、この特性だけに着目していると番組が「固く」なるだけでプライムタイムで高視聴率を維持するのは厳しいのでしょう。そこでFoxは「大衆娯楽番組」の要素を決勝ラウンドから見事に取り込んでいます。「一般聴衆による投票」という地味な仕掛けが、娯楽番組性を引き出す「てこ」の役となっていることに気づきました。視聴者からの課金投票にて広告収入以外の収益を番組として確立したと思われがちなこの仕組み。実は、AIの高視聴率を維持するための影の立役者であり、新収益源以上の意味があるはずです。

歌唱力は最悪ですが、そのユニークなルックスと髪型で今でもベスト8に残っているSanjaya君。
最悪な人に投票しよう!というWebサイトでも取り上げられているように、今では10代を中心として、この17歳のインド系の少年Sanjaya君に投票することが一つのブームとなってます。ここまで来ると、優勝者はMelindaのような素晴らしい歌唱力を持ったシンガーではなく、組織票を獲得できた人となる可能性もでてきて、より娯楽性が高まるわけです。一般聴衆による投票制度が「一人の個人が複数回投票できてしまう仕組みなのでアンフェアだ」と、当初僕も思ってました。しかし、番組が真剣なコンペティションではなく娯楽番組として考えれば、複数票、組織票なんでもよいわけで予想とは全く異なる結果の可能性もあるといったスリル感も芽生えます。もし番組制作者が初めからこの2種の要素をミックスさせて狙っていたとしたら、それはかなり優秀な集団といえるのではないでしょうか?

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